あの日みた月を君も
もう一度、と言われて、また元の配置に戻った。

ヒロがじっと私を見つめてる。

その目は、本当に私の事が好きなんじゃないかしらってくらい情感の隠った目に見えた。

気のせいだろうけどさ。

「本当は、ずっと君のことが好きだった。」

さっきと少し言い方が違っていて、一層気持ちがこもってるように感じられた。

「私もあなたのことが好きだったの!」

ヒロの目を見て、きちんと言ってみた。

ドクン。

なんだろう。

ドキドキとも違う、自分の奥の方から溢れそうな気持ちが押し寄せてきた。

一瞬、これが現実なのか演技なのか忘れてしまう。

「おい!」

担任の声が頭上で響いた。

その声に現実に引き戻される。

「お前らさー。ここは公の告白の場じゃないんだから。特に佐久間は入り込みすぎ!近藤突きとばすの忘れてるだろうが。」

周りの生徒達が冷やかすような声で笑っていた。

入り込みすぎって、そんなつもりなかったのに。

ヒロの目を見てたら、何か変な気分になっただけ。

「こんな短いシーンで時間とってたら、稽古時間すぐになくなるぞ。」

担任はメガホンで自分の頭を軽く叩いた。

「すみません。」

担任と周りの生徒達にペコリと頭を下げた。

顔を上げるとヒロはじっと私を見ていた。

くすりともせず。ただじっと。

恥ずかしいんですけどー。

思わず顔が熱くなってうつむいた。

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