あの日みた月を君も
「マサキも言うことが、記者らしく社会派っぽくなってきたな。俺の研究を叩くような真似はやめてくれよ。」
少し冗談めかして言った。
でも、半分は冗談ではなかったけれど。
「ソウスケが、公害の出ないプラスチックを開発した暁には、トップ記事で取り上げてやるさ。まぁその頃に俺が記者から昇進して編集部に所属してればの話だけどさ。」
「頼むよ。」
僕らは顔を見合わせて笑った。
マサキの一言一言には勢いがある。
僕にはない勢いが。
マサキが急に正面に顔を向けたまま切り出した。
「ところで、アユミちゃんとはその後連絡取ってるのか?」
「アユミ?」
マサキは正面を向いたまま、熱燗を追加した。
今日はペースが早いような気がする。
「会ってないよ。卒業してから全く会ってない。」
「そうか。」
マサキは時々、ふいにアユミの話題をふってくる。
「気になるのか?アユミのこと。」
学生の頃から、きっとマサキはアユミのことが気になっているんだろうと気づいていた。
だけど、僕も好きだったから敢えてそのことでマサキとの関係を壊したくなくて気づかないふりをしていた。
熱燗が運ばれてきた。
お猪口を二つもらい、互いに注ぎ合った。
「気になるっていうか、ちょっと社内でアユミちゃんのおやじさんの銀行の事が話題になってたからさ。」
「ん?何だ?」
マサキは熱燗をぐいと飲み干すと、少し声を落とした。
「アユミちゃんとこの銀行、かなりやばい不正が見つかったらしいんだ。もうすぐ大きな記事になると思う。」
アユミのお父さんが経営している銀行は地方銀行で、それなりの名前あるけれど、不正をもみ消すだけの力を持ってるかといえば、そこまでではなかった。
だからきっとそういう記事が公になると、銀行はかなりの痛手を受けることになるだろう。
少し冗談めかして言った。
でも、半分は冗談ではなかったけれど。
「ソウスケが、公害の出ないプラスチックを開発した暁には、トップ記事で取り上げてやるさ。まぁその頃に俺が記者から昇進して編集部に所属してればの話だけどさ。」
「頼むよ。」
僕らは顔を見合わせて笑った。
マサキの一言一言には勢いがある。
僕にはない勢いが。
マサキが急に正面に顔を向けたまま切り出した。
「ところで、アユミちゃんとはその後連絡取ってるのか?」
「アユミ?」
マサキは正面を向いたまま、熱燗を追加した。
今日はペースが早いような気がする。
「会ってないよ。卒業してから全く会ってない。」
「そうか。」
マサキは時々、ふいにアユミの話題をふってくる。
「気になるのか?アユミのこと。」
学生の頃から、きっとマサキはアユミのことが気になっているんだろうと気づいていた。
だけど、僕も好きだったから敢えてそのことでマサキとの関係を壊したくなくて気づかないふりをしていた。
熱燗が運ばれてきた。
お猪口を二つもらい、互いに注ぎ合った。
「気になるっていうか、ちょっと社内でアユミちゃんのおやじさんの銀行の事が話題になってたからさ。」
「ん?何だ?」
マサキは熱燗をぐいと飲み干すと、少し声を落とした。
「アユミちゃんとこの銀行、かなりやばい不正が見つかったらしいんだ。もうすぐ大きな記事になると思う。」
アユミのお父さんが経営している銀行は地方銀行で、それなりの名前あるけれど、不正をもみ消すだけの力を持ってるかといえば、そこまでではなかった。
だからきっとそういう記事が公になると、銀行はかなりの痛手を受けることになるだろう。