あの日みた月を君も
すると、その真ん中の茶髪女子がふふんと馬鹿にしたような笑みを浮かべて他の2人と顔を見合わせて言った。

「何?だってぇ?」

うわ、こわっ。

こういう系の女子って、ほんと苦手。

中学では地味子できたから、そういう派手系の女子達の目にも留まらなかったんだけどねぇ。

「あんたさ、どういうつもり?」

「どういうつもり、とは?」

「しらばっくれてんの?」

全く訳がわからない。

私は首を傾げて、その茶髪女子を見返した。

「ふざけないでよ。あんた、大山ヒロくんとキスシーンしたいからってわざわざ役交代してもらってんじゃないわよ。」

「は?」

寝耳に水なんですけど。

知ってて交代したわけじゃないし。

「普通さぁ、ラブシーンなんて男女でやるなんてことが馬鹿なのよ。男同士でやらせろって。」

それは、担任に言ってもらえますか?

心の中で突っ込みを入れながら、とりあえず興奮気味に捲し立てている茶髪女子の状態を見守っていた。

「とにかく!あんたがヒロくんの相手役っていうのがたまらなく鬱陶しいのよ!」

「私が?私がって言うけど、私はあなたたちに何かしました?」

どうして私が相手役だったら鬱陶しいわけ?

ふいに不愉快な気分になって言い返した。

「他の子がやるんだったらあなたたちは許せるの?」

「そうねぇ。あんたみたいに浮かれ気分でやらないような女子なら許せるわ。」

「別に浮かれてなんかないですけど。」

「聞いた話では普段はしらっと男なんて興味なしみたいなタイプなのに、稽古の時は俄然ウキウキしちゃって、うるうるしちゃって、必要以上にヒロ君と見つめ合ってるとか言うじゃない。あんたみたいなブス、そんなことしたってかわいくもなんともないんだから。ヒロ君だって、絶対あんたなんか目にも留めないんだから!」

ブス~??

まぁ、かわいくはないけどさ、ほとんど面識もない人にブス呼ばわりされたくはないわよ。

腸が煮え繰り替えりそうだった。

だから、思わず言ってやった。

「全然今の役に執着ないし。いいわよ。お望み通り私は役から外れてあげるわ。大山君にも全く興味ないし。」


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