あの日みた月を君も
早くこの苦痛な時間が終わらないかと思いながら、頬杖をつく。

ガタン。

大山ヒロが椅子を引いて立った。

その音に一瞬我に返る。

「大山ヒロです。T中出身で、趣味は、」

T中か。

中学は意外と近い場所だったのね。

町のどこかですれ違うくらいはあったかも。

「趣味は、さっき隣の子も言ってましたが、月を眺めることです。」

一気に目が覚める。

大山ヒロも、私と同じ?っていうかそのまんまじゃん。

思わず、ヒロの方に顔を向けた。

ヒロはそんな私に見向きもせず、そのまま着席した。

担任の先生はヒロの発言にここぞとばかりに食いつく。

「いやー、佐久間さんと一緒で月に興味があるのか。まさか、二人は付き合ってないよね?」

おどけた調子で言った先生の言葉に、お馬鹿なクラスメイト達は一瞬どよめいた。

んなわけないだろが。

担任もくだらないこと言う。

ヒロが言った。

「付き合ってた・・・こともあったかもしれません。」

は?

何言ってんの、こいつ。

思いきり「は?」って顔でヒロをにらみつけた。

「いやいや、気になる発言だねぇ。過去に付き合ったことがあるってこと?」

先生は更におもしろがる。

周りの生徒達も「ひゅー」たの「きゃー」なんて騒ぎ立てた。

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