あの日みた月を君も
「で、結局リョウはどうするのよ?」

ショウコの口の端にソフトクリームが少しついていたのが気になりながらも、

「わかんない。」

って答えた。

答えた後、自分の口の端を指して、「ついてる。」って教えてあげた。

「そのイケメンさぁ、ひょっとしてリョウのこと好きになってんじゃない?」

「ないない。」

自分の顔が熱くなってるのをごまかすように、顔の前で手を振った。

そして、随分溶けてしまったソフトクリームをすすり上げる。

「だってさ、普通そこまで言わなくない?お前にやってもらう方がいいだなんて。しかもキスシーンありなんでしょ?」

んなこと、わかんないじゃん。

今までほとんどしゃべったことのないカスミよりは、これまで一緒に稽古してきた私の方がやりやすいってだけかもしれないし。

「それにしても、その女3人組みもむかつくよね。何それぇ。」

ショウコの眉がぴくんと上に上がる。

「どうして近藤、カスミだっけ?その子だったら許せるわけ?なんか怪しいよね。そのカスミって子と繋がってんじゃないの?」

ショウコはそう言うと、コーンの残りを口に全部入れ込んだ。

繋がってる?

あの3人組みとカスミが?

それはいくらなんでもないでしょう。

『いつでもリョウの味方だよ』って言って励ましてくれるカスミだよ?

まさか、まさかね。

ショウコの言ったことが、鈍く胸の奥に刺さって取れなかった。
< 62 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop