あの日みた月を君も
8.キューピット
8.キューピット


撮影は着々と進み、いよいよ私の出番が近づいてきた。

私の出番の撮影場所は体育館の裏。

クラスメイト以外の学内生も、野次馬的に見に来ている。

担任が追い払うも、皆それぞれフェンスに掴まったり、体育館の2階の窓から眺めたりしていた。

あー、やだ。恥ずかしすぎるんだけど!

とりわけ、ラブシーン撮ってるとこに色んな目があると集中できないし。

体育館の柱の影には例の3人組みの姿もあった。

ヒロは3人組みの方をちらっと見た。

そして、何を思ったのかつかつかとその3人の前に歩み出て言った。

「本番のお楽しみにしておいてくれる?撮影に集中出来ないから向こうに行っててもらえるとありがたいんだけど。」

すごくあっさりと、嫌味無く言ってのけた。

3人組にうちのクラスメイト達の視線が一斉に注がれる。

「けちね。」

と3人組はその視線に堪えきれなくなったのか、あわてた様子で去って行った。

ふぅん。

ヒロもなかなかやるじゃん。

ちょっと嬉しかった。

撮影リハーサルが始まった。

「本当はずっと君が好きだった。」

「私もあなたが大好きだったの!」

少しコミカル調に言ってみたら、とても自然な感じになった。



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