あの日みた月を君も
席に戻ると、カスミは嬉しそうな顔で私の耳元に「ありがとう」と言った。

私は「別に、お安いご用よ。」と小声で返した。

ふぅ。

今日は色んな仕事が片付いていく。

撮影も終わったし、カスミにも天体観測部のこと伝えて、ヒロと3人で会う日も決めた。

ちょっぴり肩が重たくて、腕を回す。

そうこうしているうちに担任が教室に入ってきた。

「お前達、撮影までよくがんばったな!あとの編集は先生と編集担当とで進めるから編集担当の皆はよろしくな。」

先生も教室の生徒達も、なんだか浮き足立っているような雰囲気が漂っていた。

やっぱり皆で何か作り上げるのって、充実感があるものなのかもね。

そんな周りを冷静に見ている私と、その横に文庫本を眺めているヒロ。

月好きは、冷めてる、のかもしれない。

だけど、できあがりを見るのはとても楽しみだった。

ちょっぴり恥ずかしいけどね。


日直の号令で皆ぞろぞろと教室を出て行く。

げた箱で靴を履き替えていた時、後ろから肩を叩かれた。

ふり返ると、カスミが立っていた。

目を大きく見開いて何かを企んでいるような表情で・・・っていうのは言い過ぎか。

とにかくいつものカスミの顔ではないのは確かだ。

思わず一瞬怯んで、靴を履きながら痩けそうになった。

「どうしたの?」

靴紐を結びながら尋ねた。

「あのね。お願いがあるんだ。」

「お願い?」

「うん。明日のことなんだけど。」

なんとなくその続きが何かわかったような気がした。

「明日、私と大山君2人きりで話しできるようにセッティングしてくれないかな?例えば、リョウに急用ができたとかで行けなくなったとか。」

まぁ、そんなとこだとは思った。

「うん、構わないよ。」

私はスカートの裾を払って立ち上がった。

「ありがとう!」

カスミはいつものような満面の笑顔で私の腕に抱きついた。

「じゃ、また明日。リョウ、バイバイ!」

カスミは大きく手を振ると、そのまま走って出て行った。


なんていういうか・・・。

普通、友達のために何か役に立ちたいとか、立てたら嬉しいとかあるのに、どうしてかカスミにはそういう気持ちが湧かなかった。

カスミが私にとって、本当の友達じゃないから?

ま、どうでもいっか。

明日はショウコ、誘ってみよ。

校門を出てすぐにショウコにLINEを送った。


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