さくら 咲け
冬休み
「え、麻奈ちゃん、良太にマフラーあげなかったの!?」
冬休み一日目の朝にこんなこと言われるなんて思わなかったな。
「うん。元々自分の分だったし」
まだ驚いた表情が抜けてない沙奈に言う。
「嘘。一昨年作ったやつがあったじゃん」
私の返事を聞いて真顔になる沙奈。
「心機一転的なやつだよ」
沙奈が私に近づいてくる。
「小学校に作ったやつ中2まで使ってたじゃん。
心機一転なら、中1で新しいの作るよね?」
私の真横に立って、私の言葉に反論する。
「~っ、そうだよ!渡さなかったんだよ!」
もう、何も言えない。そう思ってつい言ってしまった。
くそう、こういう時だけ鋭い!
「どうしてよ!」
沙奈は困ったような、怒ったような、泣いちゃいそうな顔で聞いてくる。
色々な理由を考えた。
でも、ただ一つ...
「勇気が...出なくて」
勇気が出なかったの。
良太くんのこと、本当は好きかもなんて思ったけど、私にはずっと引っかかってる言葉がある。
誰も気にとめてない言葉だけど、それを言った良太くんに、これからも好きになってもらえる自信は...ない。