さくら 咲け
そのまま沙奈は圭介くんにおぶられて行ってしまった。
...沙奈が、怪我しなくてよかった。
...沙奈が、倒れる前に、気づけてよかった。
...圭介くんが、偶然そこに居てくれてよかった。
...私が倒れた時みたいに、圭介くんが、沙奈を助けてくれてよかった。
なのに、なのになんで、こんなに胸がザワザワするんだろう。
よかったはずなのに、私の心はいつまでもザワザワ、モヤモヤしてる。
よかったはずなのに、沙奈が圭介くんにおぶられてる姿が目に焼き付いて離れない。
体調悪い人に、そんなこと思うなんて...私は、いつからこんなに性格が悪くなったんだろう。
──トン
「麻奈ちゃん、どした?ぼーっとして」
私の肩を軽く叩いて、良太くんが顔をのぞき込む。
「わ、良太くん!ビックリした~」
「いやいや、ずっと突っ立ってた麻奈ちゃんに俺がびっくりしたよ
どしたの?なんかあった?」
「...ううん、なんでもない」
こんな黒ずんだ私の心なんて知られたくなくて、笑顔で答える。
「あ、そうだ良太くん、さっき沙奈が倒れちゃって、圭介くんが保健室まで運んでくれてるの。
沙奈の荷物、教室に運ぶのお願いしてもいい?」
「あ~、そうだったんだ
だから麻奈ちゃんは突っ立ってたんだね。
心配なら、保健室行ってくれば?」
良太くんは、私がぼーっとしてたのを沙奈が倒れたからだと解釈したらしい。
「ううん、大丈夫。圭介くんがついてるし」
「そっか。そだな」
私の言葉に納得した良太くんは、「じゃあな」と言って自分の席の方へ向かった。
...私も、早く戻らなきゃ。