僕らの空
「どうしたの?」
顔を上げると一人の女の子が心配そうな顔で俺を見ていた。
「…別に。」
その娘は控えめにクスッと笑って俺の隣に腰を下ろした。
「野球?」
「へ?」
彼女は俺のエナメルを指さしてそぉ言った。
「あー、兄貴のお下がり。」
とっさに付いた嘘だった。
「さーかーぐーち?坂口君ってゆーの?」
エナメルにある刺繍を見て嬉しそうな顔してる。
純粋に可愛いなって思った。
「あたし、茂木麻美(モテギアサミ)。よろしく!えーっと…坂口君!」
「…蒼汰でいいよ。」
目を真ん丸くしている。
ホントに表情がよく変わる子だな。
「じゃあ私のことも麻美でいいよ!」
そのあと俺と麻美はアドレスを交換した。
しばらくして圭介が
「わりぃわりぃ、いろんな子にアド聞かれちゃって!」
と全く悪いと思っていない顔で来るまで、ずっと二人で話していた。