愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「私なんて全然……すごくないですよ」

幼なじみのスペックが、私という人間を評価することにはもう慣れている。
付き合っていると周囲に誤解され始めた高校生のころから、私は『海斗くんを射止めた女』として、嫉妬や羨望の眼差しと闘ってきた。

いくら否定しても、海斗本人がそれを認めているのだからどうにもならなかった。
海斗と本当に付き合っていた子たちは、若干それをわかってくれてはいたが、周囲は彼氏に浮気されまくる女とでも思っていたのだろう。

そんな海斗だったが、彼自身は女遊びをしても批判されなかったところがすごい。
なぜか私が、彼にそうさせているような風潮だった。身の程知らずでいい気味だとでも言われていたのだろう。

私自身は、自分をいたって平均的なレベルの女だと思っている。
想い人と相思相愛になったことはないが、告白されたことだってある。

「海斗さえいなければなぁ」

私のつぶやきに、山内さんは気づいてはいない。

そう言いながらも、昨日振られたことも海斗のせいではないし、私に彼ができないことももちろん、海斗が悪いわけではない。
すべてを彼のせいにして、私は自分に言い訳していることにだって気づいていた。

昨夜、海斗に聞いてもらったせいか、中野さんのことは嘘のように吹っ切れていた。
勇気を振り絞って告白したのに、彼の思いがけない反応に興ざめしたからかもしれない。
海斗から逃げ出すために、恋をしてみたかっただけかも。本気で好きだと錯覚していたのかもしれない。

こんなふうに思いたくはないが、私なんて所詮、その程度なのかも、と考えてしまう。





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