愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
どうか束の間の結婚であっても、時間が許す限り俺のそばにいてほしい。
手の届かないところに行かないでくれ。
そんなことを考えていると、エレベーターが七階で止まり扉が開いた。
エレベーターを降りて外に出る。
大きな月と船のライトが船上を照らし、デッキは船内と変わらないほどに明るい。
海を渡る強い風が、髪を逆立てるが寒くはなかった。
パーティ参加者のみを乗せた航海だから、人影はまったくない。
まだ宴は始まったばかりだからだ。会場では今ごろ、俺と瑠衣の噂話でもちきりだろう。
そのとき、手すりに両手をかけて佇む瑠衣が海を眺めている姿が目に入った。
ゆっくりと彼女に近づいていく。
風に揺れるドレスの裾が、月明かりにヒラヒラと照らされている。
海に浮き上がるように見える彼女の姿は、白く光り幻想的だ。
「瑠衣」
呼ぶと彼女は振り返った。
涙の残る赤い目が俺をじっと見つめた。
「少し頭を整理しようと思ってここに来たの。考えてみたら……奏多さんが怒るのも無理はないわね。初めから本物になるはずなんてないもの。ちょっと、調子に乗ってしまったみたい。きっと、素敵な夜のせいだと思う。先ほどの話は、どうか忘れて」
そう言って微かに笑う瑠衣の顔は儚げで、今にも消えてしまいそうな錯覚に陥りそうだ。
まるで今感じていることが、すべて束の間の夢であるかのように思える。
「奏多さんが言う通り、今夜は忘れられない時間となったわ。あなたのパートナーとして階段を下りたとき、人々の羨望の眼差しが痛いと感じたのに、しばらくしたら、それが嬉しくなったの。徐々にあなたの魔法にかけられていった」
手の届かないところに行かないでくれ。
そんなことを考えていると、エレベーターが七階で止まり扉が開いた。
エレベーターを降りて外に出る。
大きな月と船のライトが船上を照らし、デッキは船内と変わらないほどに明るい。
海を渡る強い風が、髪を逆立てるが寒くはなかった。
パーティ参加者のみを乗せた航海だから、人影はまったくない。
まだ宴は始まったばかりだからだ。会場では今ごろ、俺と瑠衣の噂話でもちきりだろう。
そのとき、手すりに両手をかけて佇む瑠衣が海を眺めている姿が目に入った。
ゆっくりと彼女に近づいていく。
風に揺れるドレスの裾が、月明かりにヒラヒラと照らされている。
海に浮き上がるように見える彼女の姿は、白く光り幻想的だ。
「瑠衣」
呼ぶと彼女は振り返った。
涙の残る赤い目が俺をじっと見つめた。
「少し頭を整理しようと思ってここに来たの。考えてみたら……奏多さんが怒るのも無理はないわね。初めから本物になるはずなんてないもの。ちょっと、調子に乗ってしまったみたい。きっと、素敵な夜のせいだと思う。先ほどの話は、どうか忘れて」
そう言って微かに笑う瑠衣の顔は儚げで、今にも消えてしまいそうな錯覚に陥りそうだ。
まるで今感じていることが、すべて束の間の夢であるかのように思える。
「奏多さんが言う通り、今夜は忘れられない時間となったわ。あなたのパートナーとして階段を下りたとき、人々の羨望の眼差しが痛いと感じたのに、しばらくしたら、それが嬉しくなったの。徐々にあなたの魔法にかけられていった」