愛され婚～契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます～

振り返った瑠衣の目の前に立つ。
自分が嫉妬にとらわれ、突き放すように言った言葉を後悔した。彼女は自分を責めることで、解決しようとしているみたいだ。

「私は奏多さんにとってどういう存在なのかを、忘れそうになるの。あなたがあまりにも優しいから。このままじゃもう、嘘の芝居は続けられなくなりそう」

好きだと告げたら、君は楽になるだろうか。
それとも、俺の気持ちに応えられないことで、さらに自分を責めるだろうか。
答えが見えない。

「混乱するようなことを言ってごめん。キスをしたりするのも本当は必要ないことだ。ちょっとやり過ぎたな」

彼女が余計なことを考えずに、目的を最後まで全うするためには、本来のふたりの関係に戻らなくてはならないのだとわかった。

「俺たちは妙に気が合って、俺は君といると楽しくなった。親密にふるまう必要があると錯覚していたのは、俺のほうかもしれないな」

彼女の心の負担を軽くしようと、言葉を選んで話す。
伊吹の言う通りだと思う。俺はどうしても、先に相手のことを考えてしまうようだ。
だけど、そうすることで瑠衣が元通りに笑ってくれるのならば、それでいいと思えた。

「演じるだけの関係に戻ろう。自分のことを最優先して、お互いをうまく使う。それが本来の目的だからね。余計な感情はぬきだ」