愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
瑠衣が小さく頷く。

「好きになったら終わると決めたのに、奏多さんの気持ちを聞いたりするのはルール違反だったわ。私はあなたを好きじゃない。あなたも私のことなんか、なんとも思ってはいない。割り切らないと、本物だと思ってしまうものね」

彼女が言うことはもっともだ。
だけどもう、俺の本心は告げることができなくなった。

「そうだね。お互い、迫真に迫った演技に流されそうになったんだ」

俺はそのまま流されて、君への気持ちに溺れかけている。君を手放す日が来ることを恐れている。
だがそれは、俺の勝手な考えだ。
気持ちを告げて、さらに先を望めば、君をまたしても苦しめてしまうのだろうから。

「奏多さん、見て。波が月の光に反射してキラキラしてるの。私、今夜のことを忘れないわ。見たものすべてがキラキラしていて、ここでの私は自分じゃないみたいだった」

海を見ながら話す瑠衣は、信じられないほどにかわいくて、切ない気持ちになる。
封じこめた想いを、いっそぶつけたい。
今の俺は、演じてなどいないのだと。君が勘違いしたのではなく、本当に愛しく思っているのだと。

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