愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
私の気持ちをするりと交わしつつも、恋を教えると言いながら甘い視線を向けてくる。そんな奏多さんに、いとも簡単に心を奪われていく私。

この関係が嘘だと知れたなら、私の両親はどう思うだろう。
私と別れた奏多さんを、心から憎むのではないだろうか。
そう考えると怖くなる。

彼だけが悪いわけじゃない。私もそれを望んだ。
やはり自分で母にはっきりと説明すべきだと思い、ドアに向かって歩きだそうとした瞬間に、彼が部屋に戻ってきた。

「奏多さん。母はなんて?」

「ずいぶんと驚いていたけど、状況だけはわかってもらったよ。瑠衣の気持ちが変わらないならば、どうしようもないって仰ってた」

彼はソファに座り、私に手招きをする。
私はその隣に座ると、彼のほうを見た。

「俺は君を好きだと言った。幸せにすると。心苦しかったけど、君のためでもあるから。近々、ご両親に会いにいこう。あらためて結婚を許してもらおう」

彼が腕を伸ばして、私を包むように抱きしめる。
その胸に頬を寄せ、目を閉じた。

「あ、そうだ。これを渡さないと」

顔を上げて彼を見ると、ポケットから小さな箱を取り出した。

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