愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「婚約指輪。君に」
彼は私の左手をそっと掴むと、箱の中に入っていた指輪をはめた。
「終わるまではこれを外さないで。悪いようにはしない。俺を信じてほしい。君の望みを叶えるから」
薬指に収まった指輪を見つめる。
イミテーションではない、本物の輝き。
この石が放つ輝きが、まるでふたりの未来を示しているかのように感じる。明るく、幸せな。
だけど私の望みは叶わない。
一番手に入らないものを求めているのだから。
「有森瑠衣さん。あらためて、俺と結婚してください」
真剣な眼差しを私に向けて奏多さんが言う。
女性ならば誰しもが憧れるシチュエーションが、今まさに自分にふりかかっている。
自分に向けられたプロポーズの言葉を、最高の男性から聞くことができた。
彼の気持ちが本物ならば、私は天にも昇る気持ちになっただろう。
「はい」
胸が苦しい。必死で彼に縋り、気持ちを伝えたい。
今の私は、溢れる想いを抑えることに必死だ。
「失礼いたします。奏多さま。東堂さまが、面会を求めておられますが。お断りいたしますか」
そのときドアの向こうから、伊吹さんの声がした。
「東堂さんが?……いいよ。少しなら会おう」
彼は立ち上がる。
甘く広がっていた空気が、一瞬のうちに消えた。
「瑠衣。しばらく待ってて」
プロポーズの余韻もなく、彼は普通に戻り、私にそう言って部屋を出た。
指輪を見ながらぼんやりしていると、ドアをノックする音がした。
「奏多さん?もう戻ったの?」
取引先と話していたのなら、あまりにも戻りが早い。
まさか、気持ちが変わって、プロポーズのやり直しに来たのかと思いながらドアを開ける。
「こんにちは。有森瑠衣さん」
だがそこにいたのは、若い女性だった。
パーティの招待客だからか、華やかな黒のドレスを着ている。
美しい顔立ちの、背の高い人だった。
「あの……?」
誰だかわからず、彼女を見つめる。
「突然ごめんなさい。あなたに言っておかなくてはならないことがあるの。私の話を聞いていただけるかしら」
彼は私の左手をそっと掴むと、箱の中に入っていた指輪をはめた。
「終わるまではこれを外さないで。悪いようにはしない。俺を信じてほしい。君の望みを叶えるから」
薬指に収まった指輪を見つめる。
イミテーションではない、本物の輝き。
この石が放つ輝きが、まるでふたりの未来を示しているかのように感じる。明るく、幸せな。
だけど私の望みは叶わない。
一番手に入らないものを求めているのだから。
「有森瑠衣さん。あらためて、俺と結婚してください」
真剣な眼差しを私に向けて奏多さんが言う。
女性ならば誰しもが憧れるシチュエーションが、今まさに自分にふりかかっている。
自分に向けられたプロポーズの言葉を、最高の男性から聞くことができた。
彼の気持ちが本物ならば、私は天にも昇る気持ちになっただろう。
「はい」
胸が苦しい。必死で彼に縋り、気持ちを伝えたい。
今の私は、溢れる想いを抑えることに必死だ。
「失礼いたします。奏多さま。東堂さまが、面会を求めておられますが。お断りいたしますか」
そのときドアの向こうから、伊吹さんの声がした。
「東堂さんが?……いいよ。少しなら会おう」
彼は立ち上がる。
甘く広がっていた空気が、一瞬のうちに消えた。
「瑠衣。しばらく待ってて」
プロポーズの余韻もなく、彼は普通に戻り、私にそう言って部屋を出た。
指輪を見ながらぼんやりしていると、ドアをノックする音がした。
「奏多さん?もう戻ったの?」
取引先と話していたのなら、あまりにも戻りが早い。
まさか、気持ちが変わって、プロポーズのやり直しに来たのかと思いながらドアを開ける。
「こんにちは。有森瑠衣さん」
だがそこにいたのは、若い女性だった。
パーティの招待客だからか、華やかな黒のドレスを着ている。
美しい顔立ちの、背の高い人だった。
「あの……?」
誰だかわからず、彼女を見つめる。
「突然ごめんなさい。あなたに言っておかなくてはならないことがあるの。私の話を聞いていただけるかしら」