愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「奏多さん、ご無沙汰しております」

立ち上がってお辞儀をする東堂聖羅を見て唖然とする。

「有森瑠衣さんなら、先ほどお帰りになりました。なんでも、今回のご婚約を破棄したいとのことです」

「えっ」

顔を上げた聖羅は、満面の笑みを俺に向けた。

「えっと……海斗さん?とかおっしゃる方との関係を、考え直したいと言っておられましたわ。奏多さんには立場がおありになるから、ご自身は身を引かせていただくと」

楽しそうに話す彼女を見ていると、気分が悪くなりそうだ。

「君はなにを言ってるの。どうしてここにいるんだ?」

自分の顔が歪んでいるのがわかる。
口から出任せを言うところが、父である東堂氏と似ている気がした。

「私は部屋の前を通りかかって、瑠衣さんに頼まれただけです。奏多さんが戻ったら、そう伝えてほしいと」

「嘘だろ?」

信じられない。
だが、瑠衣の姿がないことは確かなようだ。


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