愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
部屋のあちこちを探す。
そんな俺の様子を見て、聖羅はクスクスと笑った。

「奏多さん。彼女はいません。……ほら、外をご覧になって?」

窓の外を指差して彼女が言う。
港に着いた船から、大勢の招待客がぞろぞろと降りていく様子が見えた。

そんな中、ひと組の男女の姿に目をとめる。

「なんで」

それは、長澤と瑠衣だった。
彼が彼女の肩を抱き寄せ歩いている。

「父が個人的に持つ海外工場を、月島に入れる計画を私に話していました」

彼女の突然の話に、俺は彼女を振り返った。

「えっ?」

先ほどの会談の内容は、まさにそれだった。
東堂の所有する最後の砦ともいえる、十カ所以上に渡る海外工場は、ここ数年もの間、月島が狙ってきたものだ。
父もそれを欲しがっていた。

こちらの条件をなかなか呑もうとはしない東堂氏に、半ば諦めの気持ちを持っていた。

「たったひとつのことを受け入れてくだされば、父は納得すると思います」




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