愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「こちらからは、過分すぎる条件を提示している。これ以上のものを要求されたら、こちら側の利益はない。白紙に戻すだけだ」

苛立ちを抑えながら言う。再び窓の外を見る俺に、彼女はさらに言った。

「有森さんとの婚約は、彼女にその意思がなくなった以上、事実上の婚約破棄です。そこで東堂の条件としてお願いしたいことは、私と奏多さんの婚姻です」

「は?」

耳を疑った。再び彼女のほうを向く。

「あなたがCEOとしての役割を果たす、一番確実な方法です。失礼ですが、有森さんとの結婚には、会社としての利点がありません」

飄々とした様子で話す彼女がにっこりと俺に笑う。

「あなたは断ることはしないでしょう。もしも不服ならば、役員会で話し合ってみたらいいですよ。幹部を納得させる策がありますか」

「会社と結婚は別の話だ。俺は政略結婚はしない」

言ってからハッとなる。
瑠衣との婚約も、偽装結婚へと繋がるものだ。
俺がどんなに彼女を想っても、彼女は俺を愛してはいない。


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