愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
瑠衣が長澤の元に戻るならば、俺に止める権利などはない。
初めから、いずれ終わる話だった。
俺が彼女を生涯かけて幸せにするわけじゃない。

急に黙った俺のそばに、聖羅が歩み寄る。

「私はあなたが好きだった。たとえ卑怯だとあなたに思われても、あなたを手に入れるためならば構わないわ。父の個人事業が欲しいなら、私から父に頼んで差し上げます」

彼女が俺の頬に手を伸ばす。
振り払う気力もなく、俺は彼女を見下ろした。

「それに……私は、私の邪魔をするものは排除しないと気が済まない性分なの。有森さんの存在があなたを苦しめるならば、あなたのために手を尽くすつもりよ。彼女が二度とあなたに近づけないように」

驚いて目を見開く。

「瑠衣は……関係ない。俺の問題だから」

自分の立場をわかっていないわけではない。
策略や陰謀が渦巻く中で、苦肉の策として偽装結婚を選んだ。
だがやはり、瑠衣を巻き込むべきではなかったのだと、あらためて感じた。

「じゃあ……受けてくださるのね?私を花嫁にしてくれる?よく考えて。そしたらすべてがうまくいくじゃない」



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