愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
母が父を愛せなかった理由がわかった気がする。
生涯の伴侶ですら、自分で選べない世界で、彼女は愛を求めていた。

婿養子であった父が見ていたものは、母ではなく彼女を取り巻く世界だったのかもしれない。
目の前で俺に結婚を迫る聖羅のように。

「俺は君を愛してはいない。君が幸せになれるとは思えない」

聖羅を母のような女にしたくはない。彼女のためを思い告げる。
CEOである俺と結婚し経済的な影響が生じれば、簡単に離婚などできるはずはない。

「私は幸せよ。あなたがそばにいて、私の立場さえ確立できたなら。それで充分だわ。あなたに愛がなくても、私があなたを好きだから」

確かに東堂との婚姻関係がもたらす、月島のメリットは大きいだろう。
自分の気持ちさえ抑えることができるならば、悪い話ではない。

「瑠衣と一度話をさせてもらえないだろうか。彼女の気持ちを確認したい」

聖羅は俺の頬から手を離し、にっこりと笑った。

「ええ、もちろん。奏多さんが納得しないと、始まらないわ」


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