愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
瑠衣と会うことを渋るかと思ったが、聖羅はあっさりとそれを許した。

「ただし、有森さんがあなたと結婚する気がなければ、私と結婚すると約束してください。そして父を役員に入れていただきたいの」

潔いと感じるほどに、彼女の要求はストレートだ。むしろ清々しいとさえ思う。

「わかった。瑠衣が決めることだから、今はまだ約束することはできないが」

「ええ。それでいいわ。よく話し合って」

瑠衣が長澤の元に帰ろうと思った理由が、ただ知りたい。
それを避けるための計画だったはずだ。

「では私はこれで。また近々、お会いしましょう」

聖羅はにこやかな顔で言うと、静かに部屋を出ていった。

それと入れ替わりに、伊吹が入ってくる。

「瑠衣さまは船を降りました。長澤さんとご一緒のようですが」

「ああ。わかってる」

俺がいない僅かな時間に、いったいなにがあったのか。
長澤がこの部屋にいる瑠衣を見つけだすことは、不可能に近い。ならば彼女が、自主的に部屋を出たということか。

「東堂が、俺と聖羅との結婚を望んでいる。聖羅の話では、瑠衣は長澤の元に戻るつもりだそうだ」

伊吹に話す。
彼は黙って話を聞いていた。
驚きもしない。まるでこうなることを、初めから予測していたかのように。



< 136 / 184 >

この作品をシェア

pagetop