愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
__「いらっしゃいませ。ご用件を賜ります」
翌週。
私の日常は元に戻った。
仕事をしている間は、どうにか余計なことを考えずに済みそうだ。
思いのほか、うまく平静を保てている。
泣いて腫れた瞼も、化粧でうまく隠した。
「ねぇねぇ、瑠衣。教えてよ。どこでCEOと知り合ったの?」
沙也加は興味津々だ。
「だからあれは、CEOの冗談だったの。前の部署でたまたま知り合って、からかってきただけよ」
パソコンを見ながら、事も無げに答える。
「嘘。冗談なんかじゃないんでしょ。誰にも言わないから」
彼女の口が堅かったことだけが幸いだ。
噂にはなっていないようだ。
「あなたを連れ出したときのCEOは素敵だった〜。ドラマのワンシーンを見ているようで」
彼女はうっとりとしながら、その場面を思い出しているような顔で言う。
「きっと実際は、罰ゲームかなにかだったのよ。素敵なことなんかない」