愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
彼は驚く私を見たまま、ニコッと笑う。

「ひどいな。もう顔を忘れたのか?」

本物だ。間違いなく、会いたくてたまらなかった笑顔だ。

「どうして。もう会わないって……」

「事情が変わったんだ。俺には敵は多いけど、献身的に尽くしてくれる部下もいるから。事実を暴くのは早いんだよ」

彼の話の意味がよくわからない。

「俺の事情はあと。とりあえず、瑠衣が今、俺を呼んだ理由を教えてよ。なんでそんなに泣いてるの?」

彼は可笑しそうにクスクスと笑いながら言う。

「よ、呼んでない。空耳じゃない?」

彼から目を背けた。
格好つけて平気なふりで別れたのに、立ち上がれないほどに恋しかっただなんて言えない。

「そうなの?瑠衣は都合が悪くなると、すぐに目を逸らす。ま、そこがかわいいんだけど」

彼に手を引っ張られて立ち上がる。
背の高い彼を、信じられない気持ちでじっと見つめた。

「……細かい事情はともかく。とりあえずは、抱きしめてもいいか?再会を祝して。と言っても、ほんの数日ぶりだけどね」

彼の艶やかな視線に、身体の奥が痺れそうになる。

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