愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「月島CEO!ありがとうございます。ご馳走さまです!」

背後から鴨池さんの声がする。

「普段、頑張ってくれるせめてものお礼。ただし、飲み過ぎないようにね」
奏多さんが振り返って言うと、鴨池さんは再び深く頭を下げた。

「伊吹さんたちがいたのね。私ったら、抱きついたりして恥ずかしい……」

「今さら」

「ひどい」

手を繋いで歩く。涙はもう乾いていた。

「俺のマンションに来る?五分ほど歩くけど」

話したいことがたくさんある。
いつまた、別れが訪れるかわからない。
後悔だけはしたくない。

「行く」

今夜が最後かもしれない。
奏多さんには、聖羅さんがいる。私といたら、今の立場を失くす恐れもある。

そう考えて、繋いだ手に力をこめる。
風に揺れる彼の髪を見上げ、そのすべてを忘れないように目に焼き付けた。

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