愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
ある程度想像はしていたが、奏多さんの住むマンションは、庶民が一生足を踏み入れることがないほどの豪華なものだった。
奏多さん以外に、どんな人たちが住んでいるのだろう。
入口に立つ警備員の隣を横切りながら思う。
建物に入ってからのエレベーターまでの距離が異様に長い。エントランスには、室内庭園まである。
キョロキョロしながら歩いていると、ようやくエレベーターが見えてきた。
エレベーターの金色の扉に全身が映る。
そこに映った自分を見つめていると、扉がすっと開いた。
ガラス張りになっているエレベーターの中からは、夜景がよく見える。
「すごいところに住んでるのね。さすがだわ。私とは違いすぎ」
なにげなく言うと、彼は不機嫌な声で答えた。
「違わないよ。持ってる時間も、気持ちもね」
そんな話をしていると、どうやら最上階にある彼の自宅に着いた。
エレベーターは三十階で止まっている。
高いところに来たからか、酔いのせいでもあるのか、頭がふわふわしている。
なにより、二度と会うことはないと思っていた最愛の人が、隣にいるのだから無理もない。