愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
重厚なつくりの玄関ドアを開け、彼は私に中に入るよう促した。

「お邪魔します」

キョロキョロしながら奥へと進む。

「この階には俺しかいないから、楽にしていて」
彼はそう言ったが、広すぎてどこにいたらいいかわからない。

十人以上は座れそうな、大きな応接ソファの隅に座る。

「ここに母以外の女性が来たのは初めてだ」

彼はネクタイを外しながら、私の隣に座った。

「東堂聖羅さんは?ここには来ないの?」

聞くと、怪訝な顔で私を見る。

「やっぱり聖羅になにか言われたか。急に消えたから、おかしいとは思っていたんだ」

奏多さんが彼女を悪く思ったらまずいと思い、慌てて取り繕う。

「なにも言われてなんかいないわ。彼女は奏多さんの立場を守ろうと、私に色々教えてくれたの」

私とは、明日には他人かもしれないが、彼女は違う。
私はふたりを引き離すために、ここにきたわけではないのだ。

「俺の立場?」

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