愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「東堂は月島ホールディングスから追放したよ。月島の予算で個人事業を行っていた。これから月島は東堂を訴えることになる。ついでに経営不振だった個人事業は、結局月島で引き受けたんだ」

「は?」

「今日は緊急の役員会だったんだ。まあ、わかりやすく言うと横領だな。聖羅も尋問を受けたが、あの場では、瑠衣と話したことまでは聞かなかったから。君たちの会話まではわからなかった」

奏多さんは突然、私をギュッと抱きしめると、ため息交じりの声で囁くように言った。

「危なっかしいなぁ。部屋のドアを開けるから、こんな嘘に引っかかるんだ。策略には気をつけろと、あれほど言ったのに。本当に、どうしようか悩んだんだぞ」

彼の背中に手を回し、抱きしめ返す。

「ごめんなさい」

「長澤と船を降りたと聞いたときは、絶望に近い気持ちになった。言っただろ?俺に任せろって。俺を信じろと。必ず守るから」

熱い涙がまたしても溢れてくる。
彼を信じきれなかった自分を本当にバカだと思った。

「だけど奏多さんが絶望を感じたのは……偽装結婚のためでしょ?私が離れるのが悲しいわけじゃない」

私を失うことを、彼は恐れない。
私を守るのは、自分のためなのだ。
今日ははっきりと想いを告げよう。私はあなたとは違う気持ちで、あなたを見つめてきたことを。

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