愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「ずっと言えずにいた。偽装結婚を提案した俺には、気持ちを告げる権利などないと。だけどどうしても……想いが止まらない」

奏多さんは、私の髪をそっと撫でる。

「瑠衣を見ていると、胸が苦しくなる。人を愛せないと思ってきた自分が、こんな気持ちになることを受け入れるのに時間がかかった」

その手が私の肩に流れ、腕を伝い、私の手を握る。
そのまま奏多さんの唇へと持ち上げられ、彼が優しく指にキスをする。

「瑠衣が好きだ。どうしようもなく。偽装じゃない。俺は一度も、君への気持ちを演じてはいないんだ。男を教えるという口実で君に触れていた」

「奏多さん……」

再び私の首すじを這う彼の唇に、私の吐息が乱れる。

私もあなたを好きだった。
いつかくる別れを恐れ、ひとり怯えてきたのだ。

「好き……」

やっとの思いで伝えると、彼の動きがピタリと止まった。

「瑠衣。本当に?」

私は頷く。
嘘で始まった私たちの関係だが、今ここにあるのは、本物の想いだけ。

あなたに伝えて、どうかわかってもらいたい。
身を焦がすような愛に、私が溺れていることを。



< 162 / 184 >

この作品をシェア

pagetop