愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「いいわ。許す」

ゴソゴソと彼に近づき、身体を寄せる。

「君のそういうところがね」

私を見て言う彼に、その先を促す。

「こういうところが?どうなの?」

クスッと笑うと、彼は私の髪を優しく撫でた。

「たまらないんだ。胸の奥を掴まれたみたいな感じになる」

「わからないわ」
「いいよ、別に」

ふたりで笑いながら、他愛のない話で盛り上がる。
奏多さんと過ごす時間は、なにをしていてもキラキラしていて宝石のようだ。

「明日は有給休暇にしよう。出かけるから」

またしても突然、彼が言い出す。

「そんなの無理よ。急には休めないわ」
「経営者がいいと言っても?君に拒否権はないよ。伊吹に任せれば君の抜けた穴は埋まるから」
「勝手なんだから。いきなり休んで、どこへ行くというのよ」
「さあね。内緒だよ」

そのときは深く考えてはいなかった。
明日、自分がどこにいるのかを。

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