愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
奏多さんの言葉に顔が火照る。
どうしてこの人は、こんなにもストレートなんだろう。
人を疑ってきたと言いながら、本当は誰よりも素直なのかもしれない。だからこそ、誰のことも信じないのかも。傷つくことがわかっているから。

「入って。ここが今日の部屋」

私たちのために用意された部屋には、大きなベッドにハンモック、ガラスの壁の向こうには、プールとジャグジーがある。

「キャー。素敵」

私はベッドに腰かけ、部屋を見渡した。

「プールに入る?それともエステでもする?エステスタッフもいるよ」

目を大きく見開いて彼を見る。

「そんなことまでできるの?あり得ないわ。すごいのね」

「月島の人間ならば当たり前のことが、瑠衣にとっては不思議かもしれない。だけど一族の中で、俺のように愛する人がいる者は少ないと思う」

彼は私の隣に座る。

「政略結婚が主流の世界で、俺もいずれそうなるのだと漠然と思ってきた。だけど君との出会いが、俺の人生を変えた。決められたところを歩くしかなく、無気力だった頃には感じなかったことを、今は感じてる」


奏多さんが私を見つめる。
「瑠衣には感謝してる。俺を幸せにしてくれるから。明日が楽しみだなんて思ったことはなかった。今は君と、なんだってしたいと思うんだ」

顎を掴まれ、私は目を閉じた。
彼からのキスを受ける瞬間は、何度あってもドキドキしてしまう。
私をこんなふうにとろけさせるのは、彼にしかできないことだ。




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