愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
螺旋状の階段をゆっくりと上がる。
屋敷の中は静まり返っていた。
何人ものスタッフや、龍さんと伊吹さんの姿はない。
私の歩く靴の音だけが響き渡る。
「皆どこにいるのかしら」
あまりの静けさに、思わずひとりでつぶやいたが、もちろん誰も返事をしない。
「テラスは……あっちかな」
広い屋敷で部屋数は多いが、建物の間取りはすっきりとしている。
テラスまでは迷わずに行けそうだ。
一直線に続く廊下を真っすぐに歩いていく。
テラスに繋がると思われる扉の向こうから物音はしない。
不思議に思いながら、思いきって扉を開けた。
「奏多さん?ここにいるの?」
私が外に足を踏み出した途端、暗かったテラス上にライトが一斉に灯された。
「え」
驚く間もなく、クラッカーが左右から私に向かって鳴り響く。
__パンパン!
「きゃっ」
耳を塞いで目を閉じたあと、そっと前を見ると……。