愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~

「君はきっと、俺を見捨てたりはしない。これから俺が頼むことを、快く引き受けてくれる。そんな直感がしたよ。そうだよね?」

彼の断定した言い方と、目の前で揺れる瞳に、私はパニック状態に陥りそうになる。

「あの。私はただの社員で、おそらくCEOのおっしゃることには役不足だと思いますよ。他を当られたほうがよろしいのではないかと。……まあ、私の勘違いかもしれませんが」

しどろもどろになりながら言う。

「そうか。……しかし、さっきは痛かったな。ああー、もしかしたら打撲しているのかもな。いてて……参ったなぁ。会議中に倒れるかもしれないな。なんだかあちこち痛い……かも?」

「ええっ!」

急に大げさな言い方をする彼を、驚きながら見つめる。
きっと嘘だ。絶対にそんなはずはない。
そう確信しながらも、なにも言えない。

「君が俺の話を聞いてくれないなら、このまま病院に行かないとなぁ。入院なんてことになったら、明日からのスケジュールをどうしようかなぁ」

「え……っ、そんなに⁉どっどうしたらいいですか」

私が慌てて言うと、彼はニヤッと笑った。

「なに?話を聞いてくれるの」
「はい!聞きます、当たり前ですよ!」

あれ。なんだかおかしな展開になっている?
だけどもう、あとには引けない空気になっていた。

「なぁに。簡単なことさ。君と俺が、このまま親密になればいいんだよ。俺が女性たちに悩まなくてもいい、最良の方法だ。多分、君の勘は当たってる」

「親密?そんな、あり得ないですよ。恐れ多い……無理です」

顔の前で両手を横に振る。

やっぱり、予想していた通りだった。

「万が一うまくいったとして、今日は社長の娘さんから逃れても、この先また、同じことが起こります。よけいややこしくなってしまいますよ」




< 20 / 184 >

この作品をシェア

pagetop