愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「そっかー。瑠衣は恋をしたことがないんだ。じゃあ……こういうことも?」
CEOは私の腰をぐっと引き寄せると、身体を密接してきた。
先ほどよりも、彼の顔がさらに近くなる。
「ぴぇっ」
驚きで、思わず変な声が出た。
そんな私の耳元に口を近づけると、囁くように言った。
「せっかくだから楽しもうよ。これからは、どんなシチュエーションがいいか、瑠衣が決めていいよ。俺は言う通りにするから。すべてが君にとって初めてなら、思いきりドラマチックにしたいだろ?君のやりたいことをすべてやろう」
吐息を耳に感じてゾクゾクする。
「む、む、無理ですっ。もう、限界ですっ」
心臓がありえないほどにバクバクしている。
「だけどさ、ひとつだけ約束してほしい。……絶対に俺を好きにならないで。何度も言うけど、この結婚をいつまでも続けるつもりはないから」
彼は顔を離すと、優しい眼差しで私を見た。
「でも一緒にいる間は、君のことを思いきり大切にする。君の願いはなんでも聞くよ。君は俺の恩人だからね。毎日のように舞い込んでくる縁談に、さすがに嫌気がしてたんだ」
優しくはしてくれるけど、本気になってはいけないという意味だろう。だけど私に、そんな器用な使い分けなどできるはずはない。
「私は海斗との結婚話が消えれば満足です。思わず勘違いしてしまうようなご褒美なんかはいりません」