愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
そのときエレベーターの扉が開いたが、彼はボタンを押してそれを再び閉めた。
「早く。瑠衣……」
彼の舌が私の口をこじ開ける。
「かっ……奏多。やめて……」
誰かが来たらどうしようと考えると、気が気じゃない。
私は必死になってCEOの名を呼んだ。
「奏多……っ」
唇がフッと離されて、とろけるような気分で彼を見る。
「いい顔。鍛えがいがあるね。よく今まで、誰ともなにもないままいられたね。これからも名前で呼んでね」
彼は楽しそうな笑みを浮かべながら言う。
私はその顔を、うっとりと見上げた。
そのときエレベーターの扉がスっと開き、扉の向こうに男性が数名立ってこちらを見ていた。
「ひっ」
私はその光景に驚いて、彼からぱっと身体を離す。
「奏多さま。もうよろしいですか?そろそろ行きませんと」
中央に立つ小柄な男性が、無表情で言う。
年は私と同世代に見えた。
「あのさ、待ち構えるのとかはやめろよ。もう逃げないから」
「信用なりません」