愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~

そのときエレベーターの扉が開いたが、彼はボタンを押してそれを再び閉めた。

「早く。瑠衣……」

彼の舌が私の口をこじ開ける。

「かっ……奏多。やめて……」

誰かが来たらどうしようと考えると、気が気じゃない。
私は必死になってCEOの名を呼んだ。

「奏多……っ」

唇がフッと離されて、とろけるような気分で彼を見る。

「いい顔。鍛えがいがあるね。よく今まで、誰ともなにもないままいられたね。これからも名前で呼んでね」

彼は楽しそうな笑みを浮かべながら言う。
私はその顔を、うっとりと見上げた。

そのときエレベーターの扉がスっと開き、扉の向こうに男性が数名立ってこちらを見ていた。

「ひっ」

私はその光景に驚いて、彼からぱっと身体を離す。

「奏多さま。もうよろしいですか?そろそろ行きませんと」

中央に立つ小柄な男性が、無表情で言う。
年は私と同世代に見えた。

「あのさ、待ち構えるのとかはやめろよ。もう逃げないから」

「信用なりません」


< 31 / 184 >

この作品をシェア

pagetop