愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「え。この方が、先ほど話していた女性ですか」

先ほどから話している男性が、私を見て意外そうな顔をする。

「そうだよ。俺たちは運命的な出会いを果たして、しばらく前から真剣に付き合ってるんだ。今日はたまたま、瑠衣がいる月島建材に来たから、彼女に異動の話をしたんだ」

すらすらと躊躇いもせずに彼は話す。
私をジロジロと見ながら話を聞く彼らに、私はひきつりながらもにっこりと笑った。

「瑠衣。彼は月島伊吹。俺の遠縁の親戚なんだ。身の回りのすべてを任せてる秘書だから、なにかあったら伊吹に言えばいい」

「よ……よろしくお願いします」

伊吹さんはニコニコ笑いながら、私に丁寧なお辞儀をする。

「こちらこそ。私に気遣いは無用です。私の前では、月島の嘘に付き合う必要もありません。私はすべてわかっておりますから」

私は笑うのをやめて驚く。

「伊吹!嘘じゃない。失礼なことを言うと、たとえ君でも許さない。それなりの対応をするからな!」

CEO……いいえ、奏多さんが怒った声で言う。
今度は彼の剣幕に驚く。

「申し訳ございません。失礼をいたしました。善処いたします」

伊吹さんはあっさりと言うと、再び深く頭を下げた。


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