愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
それから私たちは、会社の前に停まっていた黒塗りの車の前までやってきた。
運転手が、ドアを開けて待っている。
「瑠衣。乗って」
私の私物が入った段ボールを運転手に渡し、奏多さんが手招きをする。
こんなに長いダックスフンドみたいな車は、見たことすらない。
「いや……あの」
さすがに躊躇っていると、奏多さんが一度乗った車から降りてきて私の背を押し、私を無理やり車に乗せた。
「いろいろ準備があるだろ?新居の家具とか、ウェディングドレスとかさ。決めてしまわないと、次はいつ予定が空けられるかわからないから。あ、指輪もいるな」
「新居!?ドレス!?指輪!?」
「そうだよ。必要なものはすべて揃えていかないとね」
「そんないきなり!」
私がそう言った瞬間、車のドアがバタンと閉まる。
伊吹さんたちも、後ろの車に二手に分かれて乗り込んだようだ。
車が順番に走りだし、重々しい行列が今度は車に乗って再び始まった。
海斗との結婚話が進んでいたときよりも、さらに引き返せない事態になっている気がする。
今さらながら、大変なことになってしまったと、あらためて実感した。
だけどもう、最後までやりきるしかないということはわかっている。