愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
中野さんに対しては、海斗には感じないような胸の高鳴りを感じていたのに。

「どうして迷惑なんて言うのー。自信なんて、あるわけないよぉ。本当に好きだったのにぃ」

思わず呟いた私を、海斗がベッドからチロッと見た。

「うるさいな。だから、瑠衣には俺がいるって言ってるだろ。そんな男は忘れろ。泣くなよ。寝れない」

面倒くさそうに言う海斗を見て、やっぱり違うと思う。

「嫌だ。海斗なんて、好きじゃないのー。海斗も私を好きじゃないくせに~。なんで皆わかってくれないの〜」

「勝手にしろ。いつまでもそうやって泣いてろよ。バカ瑠衣」

海斗はプイっと顔を背けると、目を閉じた。

彼を部屋から追い出すのを諦めて、私はヨロヨロとバスルームに向かった。

このまま海斗と結婚なんてことになったら、長年憧れてきた私の恋のロマンスはどうなるの?
こうしてドキドキすることもないまま、海斗のそばで年を取ってしまうの?

『私、有森瑠衣は二十八才で、恋愛経験はありません!ですが只今、婚約者もどきの長澤海斗に流されそうになってます!成り行きで結婚しちゃいました!えへっ』

そんなふうに自虐的なことを話す未来の自分の姿を考えて、背筋がゾッとする。
本当に……笑えない。

冗談じゃなく本当に、外堀を埋められてしまう。
そう考えて、心から恐れる。
本当に無理。
海斗とあんなことや、こんなこと。……できるわけがない。

海斗は本当に私がいいのだろうか。
私を女性として、扱える……?

尋ねれば、彼はきっと笑いながらこう言うはずだ。
『瑠衣のことは、目を瞑ってなら抱けるだろうな。一応、生物学的には女だしな。くだらないことを聞くなよ。あはははっ』

頭をブンブンと大きく振った。
やめてー。

「本当に嫌だ。なんとかしないと」
ベッドで寝ている彼に聞こえないように、再び呟いた。

< 4 / 184 >

この作品をシェア

pagetop