愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「ごめんなさい……違うんです。私があなたの隣に立つ花嫁として、ふさわしいとは思えなくて。海斗にいつも言われてきたの。『お前を好きになるバカな男なんていない。かわいそうで仕方がないから、嫌だけど俺が結婚するしかない』と。あなたが恥ずかしい思いをするんじゃないかって」

俺は絶句する。
仮にも事情はどうあれ、結婚しようとしている女性にそんなことを言うなんて、信じられない。
瑠衣は小柄で可憐で、むしろ綺麗な女性だと思う。

「だったら……たとえ君を悲しませても、君を解放なんてできないな。そんな男には渡せないから。俺は君をそんなふうには思わない。君から目を離した瞬間に、誰かに連れ去られてしまうんじゃないかと心配になってしまう」

彼女の目が潤みだす。
瑠衣が俺に、結婚話を消してほしいと言った気持ちが、少しだけわかった。
愛されている実感もないまま、成り行きで彼の胸に飛び込むことなどできるはずはない。
俺との関係のように、終わる保証がないのならば。

「こんなとき……どうしてほしいの?君の婚約者としては、慰めたらいいのかな」

「え?」

俺の問いかけに、彼女は首をかしげる。

「言ったよね。瑠衣がしてほしいことを言ってほしいと。すべてを叶えるって」

ちらと外を見ると、伊吹や運転手たちは、気を利かせているのか、離れた場所で話していた。

「君が笑顔になるために、俺はどうしたらいい?」

再び彼女に向き直り言うと、彼女は真っ赤な顔で呟いた。

「強く……抱きしめてほしいです。……自分に自信が持てるように。嘘でもいいから……一度でいいから、誰かに私を好きだと言ってほしいの。真剣に結婚したいって。私じゃないとダメだと」




< 42 / 184 >

この作品をシェア

pagetop