愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「いくらでも。頼まれなくても、そうするつもりだったよ。俺は瑠衣が……好きだ。君と結婚したいと思ってる」
その細い身体を引き寄せ、抱きしめる。
君の心に渦巻く不安を、俺が消してあげたい。
男に免疫がない君が、俺に心を開いていくことを嬉しく思う。
好きだと言ったことは嘘だけど、嘘じゃない。
君の幸せを心から願っている。
こんなに魅力的な女性ならば、これまでに彼女を好きになった男がいないはずはないと思う。
そのときふと考えた。
幼なじみの彼は、本当は瑠衣を本気で好きなのではないかと。
彼女に近づく男を、人知れず排除してきたのではないだろうか。
そこまで考え、腕の力を強める。
彼には渡さない。どんな手を使っても。
急激に湧いてきた独占欲と、そんなことを考える自分が、信じられない気持ち。
ふたつの感情が、心を占めていく。
「瑠衣は……世界一綺麗な花嫁になるはずだから、心配いらないよ。偽装結婚の相手が君じゃなきゃならないと考えている男は、君の目の前にいる。彼が言ったことは忘れてくれ」
彼女の身体をそっと離し、手を引いて車を降りる。
俺を見上げた彼女の表情は、落ち着きを取り戻したかのように凛としていた。