愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「月島CEO、ようこそおいでくださいました。支配人の武藤でございます」
フロントの前で深く頭を下げる支配人の前に立ち、笑顔で話す。彼とは初対面だ。
「月島奏多です。突然で申し訳ない。急に結婚することが決まって、こちらに任せたいと思って」
「光栄でございます。是非ともお任せ下さい。すべてにおいて、最高のものを演出させていただきます」
丁寧に話す彼は、俺の父と同じ年の頃か。
顔を上げた彼の笑顔は、少々引きつっているように思えた。
俺のような若い者に頭を下げるのは、不本意なのかもしれない。
「彼女が婚約者の有森瑠衣です。早速、彼女の衣装合わせをお願いしたい」
「かしこまりました」
案内されるままに、奥にあるブライダルサロンへと向かう。
「かっ……奏多さん」
瑠衣が小声で俺を呼び、彼女のほうを向いた。
「やっぱり急すぎませんか。親にも海斗にも、まだ話してないのに」
オロオロしながら歩く彼女に言われ、思いつく。
「そうだな。幼なじみの彼に話をしないと。瑠衣を諦めてもらわなくてはならないんだった」