愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
彼女の深刻な顔を見ていると、可笑しさがこみ上げてきた。

「お茶くらいは飲めるよ。黒ずくめなやつらと同席だけどね。だけどお茶の味なんかはわからないかもな。周囲の視線が痛いからね」

「出会ったときも、皆で奏多さんを探し回っていたわ。ちょっと姿を消しただけで、あんなに大騒ぎになるなんて。そんなんじゃ、トイレにだっておちおち入れないわ」

「確かにね。それが彼らの仕事だから。トイレにだって許可がいる。俺が胃腸の弱い体質じゃなくてよかったよ」

ふたりで目を見合わせる。

「ふ……っ」
「ぷっ」

その直後に我慢できなくなり、ふたりで大笑いをした。
確かに俺の生活は、異様だと思われても無理はない。
だが彼女の遠慮のない言い方が、たまらなく可笑しく感じた。

「君は本当に変わってるよ。目の付け所がそんなところなんだ。SPの存在なんて、不便を感じたことはないよ」

「大変だなと思っただけです。私だったら、窮屈で我慢できないかも」

「俺と結婚したら、彼らは君のそばにも張り付くよ。だけど心配いらない。じきに慣れるから」

「きゃー。無理です」

話していると、素直に楽しく感じる。
普段、俺と話す人は、腫れものに触るようにしか話さないからだ。



< 48 / 184 >

この作品をシェア

pagetop