愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
彼が足を止めて私のほうを振り返る。
目尻に溜まった涙を、気付かれないようにサッと拭った。
「私、デートも生まれて初めてなの。最高の思い出になるようにしてくれる?一生忘れることができないほどに」
彼は笑って言った私を見て、悲しそうな目をした。
「いいのかな。瑠衣にとっての初めてのことを、俺が全部してしまっても」
それは、この関係が嘘だから?
私が本当にあなたを好きになると困るから?
そう聞いてしまいたい気持ちを堪え、私は頷いた。
「私とデートしてくれる人なんて、奏多さんしかいないもの。今まで、誰も私に教えてくれなかった。どうせなら、全部フルコースで奏多さんに叶えてもらうわ。偽婚約者の特権よ」
思春期の頃から、ずっと海斗にバカにされ続けてきた。彼が言う通り、私を本当に好きになる人なんかいなかった。
私は少々、意固地になっているのかもしれない。
このような卑屈な考え方しかできないのだから。
「君とデートしたい男がいなかったのは、君が男を受け入れなかったからじゃないかな。だけどそれは、俺にとってはありがたかった。今日は張り切ってエスコートするよ。俺の本気をなめるなよ?」
ふたりで笑いながら歩く。
彼の優しい言葉が、素直に嬉しい。
私たちの進む先の未来は、重なってはいないけど、今はこうして一緒にいたい。
あなたの笑顔を、一秒でも多く見ていたい。
すべてを終えて別れてしまえば、二度とは会えない世界の人だから。
しっかりと目に焼き付けておこう。そのすべてを。
目尻に溜まった涙を、気付かれないようにサッと拭った。
「私、デートも生まれて初めてなの。最高の思い出になるようにしてくれる?一生忘れることができないほどに」
彼は笑って言った私を見て、悲しそうな目をした。
「いいのかな。瑠衣にとっての初めてのことを、俺が全部してしまっても」
それは、この関係が嘘だから?
私が本当にあなたを好きになると困るから?
そう聞いてしまいたい気持ちを堪え、私は頷いた。
「私とデートしてくれる人なんて、奏多さんしかいないもの。今まで、誰も私に教えてくれなかった。どうせなら、全部フルコースで奏多さんに叶えてもらうわ。偽婚約者の特権よ」
思春期の頃から、ずっと海斗にバカにされ続けてきた。彼が言う通り、私を本当に好きになる人なんかいなかった。
私は少々、意固地になっているのかもしれない。
このような卑屈な考え方しかできないのだから。
「君とデートしたい男がいなかったのは、君が男を受け入れなかったからじゃないかな。だけどそれは、俺にとってはありがたかった。今日は張り切ってエスコートするよ。俺の本気をなめるなよ?」
ふたりで笑いながら歩く。
彼の優しい言葉が、素直に嬉しい。
私たちの進む先の未来は、重なってはいないけど、今はこうして一緒にいたい。
あなたの笑顔を、一秒でも多く見ていたい。
すべてを終えて別れてしまえば、二度とは会えない世界の人だから。
しっかりと目に焼き付けておこう。そのすべてを。