愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「理由なんていつも言ってるだろ。お前なら楽だし、言うことを聞くから。結婚してまで、嫁の機嫌とか取りたくないしな。そんな未来のほうが、瑠衣と結婚するよりもあり得ないよ」
堂々と言いきる海斗は、自分が間違っているとは少しも思ってはいないのだろう。彼の私に対する扱いや物言いは最悪だけど、今まで私に嘘だけはついたことがないのだ。
「分かった。最高の彼氏を連れて来ればいいのね。そしたら、私に今までの態度を謝ってよ」
「お前に謝るようなことはしてないけど、謝れと言うならいっそ土下座してやるよ。その彼氏の前でな」
「言ったわねー!その言葉、忘れないでよ」
本当は海斗との結婚を回避して逃げるのは、彼氏なんて連れて来なくても可能だと思う。私の気持ち次第だろう。
だけどこれは、意地だ。
自分との闘いだ。
私だって、きっと誰もが羨むような恋ができる。
理想の相手と、幸せな結婚ができる。
自分を信じて、頑張りたい。
素敵な人に想われて、海斗をびっくりさせたい。
「まあ、お前が俺と結婚しなくてはならないことは、もう決まってる。そんな男はいないから。抵抗するだけ無駄だ。諦めてそうしろ。今まで恋人がいたこともないくせに」
「どうして決まってるのよ。納得できない。海斗が私との結婚にこだわる意味も分からない。私だって、恋ができるわ。海斗を驚かせてみせるから」
私が言った言葉に海斗はなにも言わずに、鼻でフッと笑った。
しばらくしてから、「じゃ。俺は寝るから」と言ってベッドに入り直す。
そんな彼を横目で見ながら、私は素早く布団を敷くと、その上に身体をドサッと横たえた。
やっぱり海斗は楽だ。ケンカしても、フォローなんて必要ない。怒りに任せて眠れば、明日にはおそらく元通り。
だけどやっぱり、なにかが圧倒的に足りない。
そう感じるのは当たり前だ。
私は彼を、男として見てはいないのだから。
「お前も今にわかるよ。俺ほどの男なんて、そうそういないってことがな……」
「自分でそういうことを言う、自意識過剰なところが嫌なのよ」
反撃しながらも、次第にうとうとしてくる。
海斗からの返事もない。彼も今度こそ、眠ったのだろうか。
そのままいつしか、海斗につられるかのように、私も眠りについた。