きらい、大きらい
きらい、大きらい
クラスメイトが続々と帰路につく放課後の教室。
窓際の自分の席で、ひとり本を読んでいれば、開けたままの窓から10月の風がふわりと入り込んだ。
少し肌寒さを感じ始める、高校2年生の秋。
空を見上げれば赤い夕日が広がっている。
「森口ー!」
その時、突然名前を呼ばれると同時に勢いよく頭をわしわしと乱された。
こんなことをするのは……。
少しイラっとしながら振り向けば、そこにいたのは茶色い髪のひとりの男子。
制服であるブレザーを着崩した彼は、私を見てふっと笑う。
その顔に、私は逆に嫌な顔をした。
「……なにするんですか。やめてください」
「相変わらずの反応だな。かわいくねー奴」
「かわいくなくて結構です」
冷たく答える私に、呆れた顔をする彼……青木匠はひとつ年上の先輩。
人懐こくて誰とでも仲良くなれるタイプの男で、人見知りで無愛想な私とは真逆な人間だ。
正直私は彼のようなタイプが苦手で、本来なら接点もなく、話すこともないだろう。
それでもなぜ、こうして彼と口を聞いているかというと……。
「相変わらず仲良しだね」
そこに現れた、同じクラスで親友の芽衣。
彼女がこのクラスにいるからだ。
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