きらい、大きらい
柔らかな笑顔を見せる芽衣とは対照的に、私は愛想なく口を開く。
「仲良くなんてない。私、青木先輩嫌いだし」
「ふふ、基本的に他人に無関心な千夏に嫌いって言わせるなんて、匠先輩すごいねぇ」
「そこ褒めるところか!?」
まるで漫才のようにテンポのいい会話をする。そんなふたりにため息が出た。
「っと、そろそろバスの時間だ。行こうぜ、芽衣」
「はーい」
青木先輩は時間を思い出したように腕時計を確認する。
その隣で芽衣はにこにことしたまま「じゃあね~」と手を振り歩き出した。
本へ視線を戻すフリをして横目で見れば、仲睦まじく歩くふたり。
なにやら話しながら、顔を近づけ笑い合うと、手と手をしっかりとつないだ。
ふたりは、お似合いの恋人同士。
そう、青木先輩がここへやってくるのは、恋人である芽衣がいるからだ。