福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
御曹司でイケメンときたら、人のことを見下したり、そうではなくてもこんな風にしてくだらない話を聞いてくれるはずもないと思っていたし、こんな平社員で未婚の私をバカにするどころか、そんな風にして感心までしてくれるとは思わなかった。
「そういえば、婚活パーティー、副社長も抜け出しちゃって良かったんですか?」
「ああ、うん。全然いい。寧ろ、あんな感じでずっと女性に囲まれて続けてたから早く出たかったんだよね」
ああいう女、すごい嫌いでさ。と言った彼の言葉は、その爽やかな笑顔にはとても似合わないキツイ言葉。
「そうなんですね」
当たり障りのない返事をしてだし巻き卵を口に運ぶ。
「ほらほら、麻美ちゃん。これも美味しいから食べて」
「あ、ありがとうございま……って、え? あ、麻美ちゃん?」
彼が次々とこちらに差し出した料理を受け取り、口に運ぼうとしたところで私は手の動きをぴたりと止めた。
「え? 麻美ちゃんでしょ?」
「いや、そうですけど」
「俺のことも副社長じゃなくて、西宮でも幸人でもいいし。せっかくだから、お近づきの印にさ」
「いやいや、それは……」
「いいじゃんいいじゃん。麻美ちゃんのこと気に入っちゃったから仲良くなりたいし。せめて西宮さん、で。ね?」
頑なに断るのもどうかと思った私は、渋々首を縦に振った。すると、ご満悦そうに西宮さんは首を縦に振り唐揚げを口に放り込んだ。