福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
───翌日。
定時を過ぎると、私は急いで帰り支度を済ませてオフィスを出た。
真っ直ぐに続く廊下を歩いていると、向かいからこちらへ向かって歩いてくる永田くんの姿が見えてきた。
「永田くん、お疲れ様」
何か考えごとでもしていたのか、俯き加減で歩いている永田くん。すれ違い際に私が声をかけると、顔を上げた彼は、目を丸くして立ち止まった。
「お疲れ様です」
一言だけそう言うと、ほんの少し気まずそうにした彼。
私の勘違いでなければ、最近、彼は私の事を避けているような気がする。
今まで、お昼ご飯は大体優佳と永田くんと私の三人で一緒に食べていた。だけど、ここ数日、彼はずっと私達とお昼ご飯を食べていない。
ひょっとして、私と西宮さんが付き合い始めたことが関係しているんじゃないか、なんて、考えすぎかもしれないけれど、私はそんな気がしていた。
「最近、お昼どうしてるの?」
「え? えっと、同期と一緒に食堂で食べてます」
「そうなんだ」
ひょっとして、一人で食べてるんじゃないか。なんて、心配をしていた私。同期の子と食べてる事を知りホッとしたはいいけれど、自分で聞いておきながら何と返せばいいのか分からない。
〝また三人でも食べようよ〟と声をかけたい気持ちはあったけれど、もし彼が、私とご飯を食べたくなくてお昼を別にしているのであれば、私にはそんな言葉を言う資格がない。