福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「大丈夫ですよ。柏原さん」
「え?」
何と声をかけようか迷っている私よりも先に永田くんの方が私に声をかけてくれた。
彼は、まるで私の考えている事を全て知っているかのように優しく笑うと、ゆっくり口を開く。
「きっと、柏原さんの事だから〝私のせいで〟って思ってると思うんですけど、そうじゃないです。確かに、柏原さんと関わる時間が少しでも減ればこの気持ちを消せるかなって思って今に至るんですけど、だけど、これは決して後ろ向きな考えじゃないです。前向きに考えてしてる事ですから」
「前向き?」
「はい。柏原さんの事を誰よりも応援したいし、僕自身も次に進むためです」
「永田くん……」
確かに、彼の目は真っ直ぐ私を見ていて、本当に何かを決意したような気持ちが伝わってくる。
私なんかの事をどうして好きなのだろう、とずっと思っていたけれど、彼が本当に私に好意を持ってくれていたことも、私の事を本当に応援しようとしてくれていることも、素直に受け入れられるし、嬉しいと思えた。
「ありがとう」
少し照れくさくて、うつむいて笑う。すると、彼は「柏原さん、少し変わりましたね」と発した。その言葉の意味がいったいどういう意味なのかが分からなかった私がきょとんとしていると、彼は少し複雑そうに眉尻を下げた。
「何だか悔しいですけど、副社長に恋してからの柏原さん、自分自身に自信がついてるというか、表情が少し豊かになったというか、すごく魅力的になったと思います」