福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

早歩きで廊下を歩き、突き当たりを曲がると、突然視界に入ってきた人物に私は「わあっ!」と大きな声を上げた。


「やっほー、お疲れ」

壁にもたれかかり右手を挙げて笑ったのは、もう既に会社の前で待っていると思っていた西宮さんだった。

「どうしてこんなところにいるんですか!……って、そんなことより、いつからここにいたんですか」

私と永田くんが話していた場所から僅か数メートルしか離れていないこの場所で、彼はいつから私を待ち伏せていたのだろうか。

もし、もっと前からここにいたんだとしたら、間違いなく会話は聞かれているに違いない。


「〝最近、お昼どうしてるの?〟って、麻美が言ったところからここにいましたー」

随分待ったんだけど、と言って唇を尖らせる彼は、どうやら私と永田くんの会話を殆ど初めから聞いていたらしい。

「最初から全部、聞いてたんですね」

「まあね」

「盗み聞きしてないで出て来たら良かったじゃないですか。私、まさかこんなところで待ってくれてたなんて思ってなかったです」

せめて姿だけでも見せてくれたら、永田くんにはまた改めて話そうと提案できたのに。

そう思っていると、西宮さんが壁から背中を離し、一歩歩き出す。

「ちょっと良い雰囲気出てたから邪魔してやろうかな、なんて思ったりもしたけど、あそこは俺の出る幕じゃなかったからね」

大人に対応しましたよ、と笑う彼は、発言が既に大人ではないけれど、彼なりに永田くんのことを考えてくれていたんだろうとは思う。


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